村杉温泉に浸かりながら放射能泉を考える

 昨日は午後だけ夏休みをいただき、村杉温泉の共同露天風呂に浸かってきました。誰もいないかと思いましたが、父子の親子連れがおられ、その後もポツリポツリと客が来られ、それなりの人気のようです。

 ここは村杉温泉の中心部にある薬師堂隣に作られた露天風呂です。大人300円、小人100円で入浴できます。入口に券売機がありますから、入浴券を買い、箱に入れて入浴します。

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 基本的に入浴のみで、洗い場はありません。無色透明のお湯が注がれ、オーバーフローもありますが、加熱循環されています。しっかりと塩素消毒され、カルキ臭はスーパー銭湯並みです。
 でも、蝉しぐれを聴きながら、空を見上げて息をつくと、心身が癒されました。泉質がどうのと気にするのは意味のないことのように思えます。熱めの湯に浸かっていたら頭がボーっとなり、ストレスがリセットされました。

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 しばし涼んだ後、再び湯に浸かりましたが、福島原発の大騒ぎにの中で、放射能泉に浸かっているというのも風流だなあなどと考えていました。

 村杉温泉の源泉は日本有数の放射線量を誇ります。村杉温泉薬師の湯のホームページによりますと、薬師乃湯3号井のラドン(Rn)含有量は744.2×10-10乗キューリー/kg (204.7マッヘ/kg)であり、放射能泉として全国的に有名な鳥取県の三朝温泉をも凌ぐそうです。
 また、源泉に限らず、村杉温泉の土地そのものの放射線量も多く、角屋旅館さんのホームページによりますと、村杉温泉中心部での放射線量は0.3~0.5μSv/hであり、一般市街地での放射線量(0.1~0.15μSv/h)の倍以上あります。村杉温泉に住む人に癌が多いという話も聞きませんから、この程度の線量では害がないことは確かです。逆に長生きの人が多いという話も聞きませんけれど。

 放射能泉の効能の根拠というのはイマイチはっきりしません。ホルミシス効果というのを根拠としているようですが、これもあいまいです。
 生体にとって毒であっても、少量であれば刺激になって良い効果を来すというものです。放射線を浴びてDNAが破壊され、細胞が傷害されても、生体内では修復力や免疫力が働いて、正常化されます。線量が多くて修復力以上の破壊が進むと困りますが、低線量の被曝で、破壊以上に修復力が活性化されると、生体の免疫力が高まって体に良いということになります。
 ワクチン接種も、弱毒化したウイルスを接種して感染させ、免疫力を高めますから、同じような理屈です。人間も甘やかされて何の苦労もなく育つより、試練を乗り越えて苦労して育つと強い人間になるということです。

 ということで、害を及ぼさない程度の、ほどほどの放射線は体に良いということになります。なるほどと思うのですが、一方、たとえ少量でも害を及ぼす危険があるので、避けなければならないという考えもあります。

 放射能泉の放射能の元はほとんどがラジウムが崩壊してできるラドンです。このラドンがα線を出して、生体に影響を及ぼすことが放射能泉の効能の本態です。
 ラドンは気体ですから、温泉水に溶け込んだラドンは気化して空気中に放出され、主に肺に吸入されて体に取り込まれ、効能効果を示します。ラドンの半減期は約3.8日と短かく、体からもすぐに排出されますから、体に対する影響はすぐに失われます。

 一方原発事故で問題となっているセシウムやプルトニウムを始めとする放射性物質は、ラドンとは異なり、半減期が長く、体内に入ると組織内に蓄積し、持続的な体内被曝を引き起こしてしまいます。
 放射能泉の効能と混同して、低線量なら健康に良いなどと短絡的に考えてはいけません。すぐに体内から消え去るラドンとは違って、低線量であっても、体にどんどん蓄積していくのですから。

 原発による被曝問題はデリケートですから、放射能泉の話に戻します。ホルミシス効果が正しいとするなら、放射能泉の効能は期待できそうに思いますが、放射能泉の実際の効能のエビデンスがどれほどあるのかはっきりしません。
 放射能泉の温泉地での疫学調査の研究も、信頼度が高いとは言い難く、しっかりした医学的研究が必要と思われます。日常的に放射能泉を利用している三朝温泉の住民で癌の発生率が低かったという研究が、しばしば放射能泉の効能として引用されますが、その後の検証で肺癌の発生率がむしろ高いという結果が出ているそうです。
 アメリカでは、高濃度のラドンが存在する地域の住民での肺癌の発生が多く、発癌物質としてラドンが考えられています。
 ラドンの効能と言っても、当然ながら濃度が高ければ害がありましょう。どんなに良い薬でも過量となれば毒になるのと同じです。
 また、短期間湯治に行くのと、温泉地に年余に渡って住み続けるのとでは体への影響は異なるでしょう。考えれば考えるほど、考えなければならないことが多いことに気づきます。

 放射能泉の効能は科学的に十分証明されていない現状にあっては、効果があると信じて入浴することが一番の効果を生むのではないかと感じています。
 要するに、放射能泉程度の線量では体に害はないけれど、効果も定かでないということと思います。もちろん、泉質によらない温泉一般としての効能効果は期待できますし、転地効果も期待できます。むしろこれが一番の効能でしょう。

 さて、この村杉温泉の露天風呂。源泉は加熱循環されています。これまで書いてきたことでお気づきになられたと思いますが、放射能泉としてどれほどの効能があるのか疑問がわきます。

 源泉に溶け込んだラドンは加熱されるとどんどん気化します。循環されればさらに気化が進んで、源泉中からは消えていきます。室内の浴槽なら浴室内にたまった空気中のラドンを吸入することもできましょうが、露天風呂ではラドンは大気中に失われます。これでどれだけの効能が期待できるかと考えても・・・。
 出湯温泉の「弘法の足湯」は、このことを踏まえて、ラドンを吸入しやすくするために、あえて小さな小屋の中に足湯を作っています。
 締め切った浴室で、低温非加熱の源泉を掛け流ししている浴槽に長時間じっくり浸かるという環境があれば良いのですけれど、加熱循環の露天風呂ではどうしようもありません。
 まあ、村杉温泉という土地自体が放射線量が多いので、村杉温泉を一回りするだけでも効能があるのかもしれませんけれど。でもねえ・・。

 露天風呂に浸かりながら、こんなことを思いめぐらしていました。まあ、余計なことは考えないことにしましょう。露天風呂に浸かって気持ち良いのは事実であり、それが最大の効能ですから。

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