混雑避けて 村杉温泉「旅館あらせい」

 日本有数のラジウム泉(ラドン泉)で有名な村杉温泉は、静かな温泉街が魅力であり、職場から近いこともあって、コロナ前は宴会や宿泊で度々利用させていただいていました。
 組合長をしている某旅館のご主人と懇意になり、村杉温泉が誘致して開催された2017年の温泉学会で、シンポジストとして講演させていただいたのも、懐かしい思い出です。
 このように思い入れのある村杉温泉なのですが、コロナの時代となり、宴会もなくなり、すっかりとご無沙汰してしまいました。
 出湯温泉もそうなのですが、身近すぎて、逆に立ち寄ることなく、通り過ぎるばかりでした。
 たまに温泉街に入ることもあったのですが、「薬師の湯」はいつ行っても混雑してますし、旅館の立ち寄り湯をお願いするのも面倒で、利用せずに帰っていました。

 そんなおり、私が運営している掲示板で「旅館あらせい」が最近話題となり、是非行かねばという思いが募りました。そして、ついに重い腰を上げて、遅ればせながら行って参りました。

 「旅館あらせい」は、村杉温泉街の中心部にあり、共同浴場「薬師の湯」のすぐ横にあります。

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 玄関の戸は開け放たれていました。スリッパに履き替えて中に入り、受付に声を掛けますと、奥からご主人の声がしました。

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 受付の料金入れに金を入れてくれとのことで、古ぼけた貯金箱みたいな缶に500円玉を入れました。
 入浴料は500円ですが、12枚で5000円という回数券があります。

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 外来入浴時間は、8時から21時まで です。

 受付前からすぐに左奥に入り、昭和レトロな廊下を進んだ先に、浴室があります。手前が女湯、奥が男湯で「白鳥風呂」と書かれていました。

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 非常に狭い脱衣場には、脱衣棚に脱衣籠

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 不似合いな鍵付きロッカーもあります。

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 脱衣場には洗面台はなく、古ぼけた廊下の洗面台を利用するしかありません。

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 脱衣場は狭すぎですので、浴室は広く感じます。女湯は狭いようですが。

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 長細い浴槽があるのみで、右端は浅くなっていて、半身浴ができます。ジェット付きで、背中をマッサージできます。

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 壁には白鳥のタイル画があり、湯口の上には白鳥が鎮座しています。

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 阿賀野市は白鳥の飛来地として全国的に有名な瓢湖がありますので、それに因んでの白鳥風呂なんでしょうね。

 洗い場は左右の壁に1か所ずつあり、ボディソープ、リンスインシャンプーがあります。

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 無色透明無味無臭の湯は、一見特徴はありませんが、身体の芯からガツンと温まり、ただの沸かし湯でないことが実感されます。
 湯に浸かりながら浴室内に充満するラドンを吸入し、全国有数の放射能泉である村杉温泉の魅力をダイレクトに味わうことができます。

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 壁にはこのような掲示があります。

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 確かにその通りですね。分割湯を励行し、浴室内のラドンを吸入し、湯上りはシャワーで温泉成分を流さないことがお勧めです。

 浴槽の隅に非加熱源泉のコックがあり、注水することができます。

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 脱衣場にこんな掲示がありました。

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 「お湯は飲まないで!」と書いてありますが、増し湯のバルブが源泉なので、飲用する場合は増し水用を利用せよとのこと。これを読みますと、飲まないわけにはいきませんよね。そんなのは私だけかな。

 浴室入り口に、2021年8月31日付けの分析表が掲示されていました。

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 源泉名は、薬師乃湯3号井。泉質は、単純弱放射能温泉(低張性アルカリ性低温泉)。源泉温度 25.3℃。湧出量 239L/分(掘削自噴)。PH 8.5。
主な成分(イオン濃度:mg/kg)は、Li 0.0、Na 50.3、K 1.4、NH4 0.3、Mg 0.3、Ca 31.2、Sr 0.3、Ba 0.0、Al 0.0、Mn 0.0、Fe(II) 0.0、Cu 0.0、Zn 0.0、F0.6、Cl 16.6、Br 0.1、I 0.0、NO2 0.0、NO3 0.0、HS 0.8、HSO4 0.0、S2O3 0.0、SO4 135.6、HPO4 0.1、HCO3 37.2、CO3 0.0、メタケイ酸 26.1、メタホウ酸 0.1、遊離CO2 0.2、遊離H2S 0.0、など、ガス性除く成分総計は301mg/kgです。そのほかに、ラドン(Rn)を 89.9 x10-10Ci/kg(24.7マッヘ単位)含みます。

 源泉は自噴しており、薬師の足湯付近の貯湯タンクにポンプを用いて圧送し、貯められた源泉は加圧ポンプを用いて、道路埋設配管で当館に供給(供給量は毎分20L)しているそうです。
 源泉は入浴に適した温度に加温して浴槽に供給、衛生管理と温泉資源の保護を目的として循環ろ過装置を使用、レジオネラ菌等の細菌繁殖防止のために塩素系薬剤による消毒処理を実施、加水処理や入浴剤の使用なし、と記載されていました。

 この3号井源泉は、この旅館の駐車場の敷地内より各旅館に供給されているそうです。

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 ということは、この旅館が源泉に一番近いということであり、それだけでもありがたく感じてしまいます。

 ただし、気になるのはラドンの含有量が減少していることです。平成13年3月の分析では、ラドンは744.2x10-10Ci/kg(204.7マッヘ単位)あり、まさに「奇跡の天然ラジウム温泉」でしたが、平成23年5月の分析では、136.6x10-10Ci/kg(37.6マッヘ単位)に下がり、そして昨年8月の分析では、89.9 x10-10Ci/kg(24.7マッヘ単位)にまで下がりました。
 療養泉としての基準は、30 x10-10Ci/kg(8.25マッヘ単位)以上ですので、ラドンは十分量含まれていますが、放射能泉の基準の50マッヘ単位は下回り、泉質名は弱放射能泉となります。10年毎の検査のたびに数字が下がっているのは寂しく感じます。
 地下水の混入でもあるのかと推測しましたが、成分総計は減っておらず、単に希釈されたわけではないようです。
 数字の上ではラドン量は減っていますが、村杉温泉の魅力が薄れたわけではなく、稀有な魅力ある温泉には違いありません。

 加熱循環ながらも、非加熱源泉の注入が可能なのは良いですね。利用客は少なく、循環とはいえ湯の鮮度は保たれています。

 「ぬる湯の進め」という掲示があり、温度を40℃位に設定しているとのことでしたが、今回の湯温は、私の体感で42℃程度と高めで、温まりも良かったです。

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 そして何よりも、落ち着いた雰囲気の中で、貸し切り・独り占めの入浴を、思う存分に堪能することができ、これが何よりの喜びでした。

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 館内、浴室とも、レトロな空気が充満しており、私が少年時代を過ごした昭和の古き良き時代を思い起こすことができます。
 設備、備品は十分とは言えませんが、温泉を楽しむ上では、何の不都合もありません。

 混雑する向かいの「薬師の湯」を300円で利用するのと、独り占めで、鮮度の高い湯をゆったりと500円で楽しむのと、どちらが良いのかは、それぞれの価値観によるでしょう。
 他の旅館の立ち寄り湯も利用したことがありますが、ここが一番いいような感じがします。皆さま方も、是非ご利用して、評価してみて下さい。
 帰り際に、受付に声を掛けてみましたが、全く反応無しでした。出入りも自由。こんな空気感もいいですね。

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