粟ヶ岳を望んで 「加茂七谷温泉 美人の湯」

 先回スノーピークの温泉を紹介し、粟ヶ岳を見ながらの入浴は爽快だという記事を書きましたが、粟ヶ岳を見ながらの入浴ということでは、加茂市の「加茂七谷温泉 美人の湯」も忘れてはなりません。

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 ここは加茂市の公共日帰り温泉「市民福祉交流センター 加茂 美人の湯」として、2002年11月にオープンしましたが、濃厚な泉質が災いして、スケールによる湯量減少など源泉トラブルが度重なり、長期の沸かし湯営業も度々で、波瀾万丈な経過をたどりました。
 その経緯は過去のブログで何度も紹介しましたので割愛しますが、泉質は別にして、公共温泉らしからぬ豪華な施設と、眺めの良さは素晴らしいと思います。
 源泉の維持管理に経費が掛かり、入館者数の減少も伴って、2004年以降は赤字経営が続き、2020年3月からの「コロナ休館」を契機に廃止も検討されましたが、存続の危機を乗り越えて、2021年4月1日に「加茂七谷温泉 美人の湯」として再オープンして現在に至ります。

 前置きが長くなってしまいましたが、先日の夕方に行って来ました。オープン直後の昨年4月初めに行って以来ですので、1年以上ご無沙汰してしまいました。

 加茂市街から、加茂川に沿って、ひたすら粟ヶ岳に向かって進みますと、一本道で到着できます。

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 駐車場からの粟ヶ岳の眺め。さすが日本三百名山ですね。景色を眺めて玄関へと向かいました。

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 左右に出入り口があります。

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 玄関を入りますと、高い天井と林立する円柱状の柱と長く延びる廊下に圧倒されます。

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 最初のオープン時は、公共日帰り温泉にしては豪華な施設を作ったものと驚きましたが、20年経った現在も豪華さは失われていません。

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 右手の下足箱に靴を入れ、鍵と引き換えに受付します。

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 料金は、タオルセット付きで大人800円、子供300円、夕方5時以降は大人600円、子供200円に割引になります。幼児は無料です。
館内着は17時まで無料で、17時以降は100円です。料金を値上げする施設が多い中にあって、良心的な料金設定です。
 営業時間は、10時から21時(最終受付20時30分)で、休館日は第2、第4水曜日で、祝日の場合は翌日です。

 ポイントカードを作ったのですが、前回は期限が半年だったものが、期限なしになっていて良かったです。半年ではポイントが無効になる確率が高いですから、要望があって変更したんでしょうね。

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 ロッカーキーとタオルセットをいただき、浴室に向かいます。廊下を歩いた先の左手に浴室があり、男女交互に使用されます。今回の男湯は、残念ながら奥の浴室でした。(残念な理由は後述)

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 2つの浴室は、左右対称で、基本構造に変わりはないのですが、左の浴室は浴槽が曲線で、右の浴室は直線のデザインという違いがあります。
 ともに、掛け湯、大浴槽、小さなジャグジー風呂、水風呂があり、外には露天風呂があります。

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 洗い場は仕切り付きと無しがあり、ボディソープ、シャンプー、コンディショナーがあります。

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 サウナは、左がドライサウナ、右がスチームサウナになっています。

 まずは、誰もいなかった大浴槽へ。

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 独り占めの入浴は気持ち良いですね。

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 隅の柱にある注湯口前が私のお気に入りの場所です。浴槽内にも加熱源泉の注入があり、温まりが良い場所なのです。

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 そして、露天風呂へ移動。ここも、先客が内湯に戻った後は、独り占めになりました。

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 手前の浴槽内に加熱源泉の注入があり、奥の浴槽底に吸入があって、循環されています。

 さて、「残念ながら奥の浴室でした」と始めに書きましたが、その訳は、露天風呂からの眺めです。
 露天風呂からの粟ヶ岳の眺めが魅力なのですが、右の浴室は木がじゃまになって見えないのです。
 左の浴室も塀がじゃまで見にくいのですが、粟ヶ岳を展望できます。どうせなら粟ヶ岳が見えた方が得した気分になれますので、その点で右の浴室は残念に思いました。
 景色は別にして、落ち着いた雰囲気は魅力的であり、和紙で作られた丸い照明が置かれ、夜には幻想的な雰囲気を創り出します。

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 加熱源泉注入口で背中あぶりをし、木々を眺めながら温まりました。

 さて、脱衣場に平成29年3月9日付けの分析表が掲示されていました。 
 源泉名は、加茂美人の湯(源泉100%)。泉質は、含二酸化炭素-ナトリウム-塩化物強塩・炭酸水素塩冷鉱泉(高張性中性冷鉱泉)。源泉温度22.1℃、湧出量6.0L/分(自然湧出)、pH6.8。
 主な成分(イオン濃度:mg/kg)は、Li 0.7、Na 9409、K 129.3、NH4 12.2、Mg 18.8、Ca 388.0、Sr 10.3、Ba 0.8、Al 0.0、Mn 0.0、Fe(II) 1.9、Cu 0.0、Zn 0.0、F 12.1、Cl 12150、Br 47.8、I 4.5、NO2 0.0、NO3 0.1、HS 1.2、HSO4 0.0、S2O3 0.0、SO4 332.3、HPO4 0.0.、HCO3 5370、メタ珪酸 10.6、メタ硼酸 41.4、遊離二酸化炭素1134、遊離H2S 1.7 など、ガス性除く成分総計 27941mg/kgです。

 スケールを防止するため、高濃度の温泉を肌にやさしいマイルドなものにするため、高濃度の温泉なので機器の保全等のため、必要な加水を実施。入浴に適した温度に保つため加温を実施。衛生管理のため循環ろ過装置を使用。衛生管理のため塩素系薬剤を使用。とのことです。
 
 実際の湯は、淡黄色透明で、わずかな薬臭があり、塩味・薬味、ツルスベ感があり、浴感は良好です。湧出量がわずか6L/分しかなく、源泉温度も低いため、加水・希釈、加熱、循環ろ過は避けられません。
 成分表上の源泉は、遊離二酸化炭素が1134mg/kgと、スーパー銭湯の高濃度人工炭酸泉をも凌駕する新潟県内では貴重な二酸化炭素泉です。
 また、炭酸水素イオンの量は県内最高レベルであり、泉質名には載っていませんが、硫化水素イオン1.2mg/kg、遊離硫化水素1.7mg/kgと、総硫黄を概算しますと硫黄泉の基準(2mg/kg)を十分に超えますので、泉質名には「含硫黄」も加えるべきです。

 このように、成分表の数字をみますと県内最高と言っても良い素晴らしい源泉なのですが、
残念ながら希釈されて加熱・循環ろ過された浴槽の湯は、その面影は失われています。この源泉を生で楽しめたら最高なのですが、汲み上げ段階から希釈しているはずですので、かなわぬ夢です。
 
 まあ、希釈されているとはいえ、その事実さえ知らなければ、これはこれで十分に満足できる泉質は保っていますので、
細かなことにはこだわらず、ここは素直に浴槽の温泉を楽しみましょう。

 湯上がりはロビーで休憩できますし、隣に落ち着いた休憩室もあります。

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 今回は利用しませんでしたが、2階には、お座敷の休憩所と食事処(ななたに食堂)があり、そこからの眺めも雄大です。個室を借りての休憩もできます。
 館内に色とりどりの和傘が飾られており、和の雰囲気を醸し出しています。

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 「北越の小京都」として売り出している加茂のイメージでしょうか。

 私は窓際にある椅子からの眺めが大好きです。

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 粟ヶ岳を眺めながらこの原稿を書きました。

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 この雄大な眺めは最高ですね。

 日が暮れて、照明に明かりがともされました。

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 指定管理者の応募がなくて、このまま閉館の危機に際したときに、加茂市の若手経営者たちが指定管理者に手を挙げてくれました。館内の掲示や装飾に、加茂への思いが感じられます。

 時間をみて退館しましたが、料金は手頃ですし、浴室は充実しています。眺めも良いですので、お勧めできる温泉だと思います。

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 夕日に照らされた粟ヶ岳をもう一度望み、家路につきました。

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