強塩泉が恋しくて 「紫雲の郷」

 9月も半ばが過ぎ、日中は残暑があるものの、朝晩は随分と過ごしやすくなりました。これから秋が深まっていきますが、日もどんどんと短くなり、過ぎ去った夏を思い起こし、一抹の寂しさ感じてしまいます。
 こんな季節になりますと、温まりの良い熱い温泉、それも強塩泉が恋しくなります。新潟市近郊で、熱めの強塩泉といいますと、「ざぶーん」「紫雲の郷」「塩の湯温泉」「西方の湯」と連なる下越海岸沿いの強塩泉群が思い浮かぶでしょう。
 最近「西方の湯」はぬるめですし、先日行ったばかりです。「塩の湯温泉」は期待通りの熱い湯で泉質抜群ですが、ボディソープやシャンプー類がなく、設備的に劣ります。今回はゆくっり休息し、露天風呂も楽しみたかったので「紫雲の郷」にしました。
 実は先日、運転免許の更新のため、聖籠町の運転免許センターに行ったのですが、優良講習で早く終わりましたので、ひと風呂浴びて帰ることにしました。
 運転免許センターから近い温泉といえば、同じ町内に「ざぶーん」がありますが、今回は少しだけ足を延ばして「紫雲の郷」にしました。

 国道113号線を北上し、聖籠町から加治川を渡り新発田市に入りますと、すぐに到着です。広大な県立紫雲寺公園内の自然豊かな場所にあります。前回来たのは今年の4月でしたので、5か月ぶりになります。

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 広い駐車場に車をとめて玄関へ向かいます。

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 こちらの入り口は手動式ですが、反対側の入り口は自動ドアになっています。下足箱に靴を入れて受付へ進み、鍵と引き換えに受付します。

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 入館料は、大人600円、小人300円、タオルセットは100円ですが、「温パラ」の割引クーポンを利用して50円引きで入館しました。
 昨今の燃料費高騰による温泉施設の値上げラッシュの中にあって、この料金を維持してくれるのはありがたいですね。
 タオルセットが100円と安いので、今回も借りることにしました。

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 奥にあるロビーを挟んで、左右に大浴場があり、2週ごとに男湯・女湯が入れ替わります。

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 右側が「藤塚の湯」、左側が「紫雲の湯」です。浴室構成は基本的に同じですが、露天風呂の巨石風呂が、「藤塚の湯」は小さめの浴槽が2つ、「紫雲の湯」は大きな浴槽が1つという違いがあります。今回の男湯は左側の「藤塚の湯」でした。

 中に入りますと、まず洗面台が並ぶスペースがあり、その奥に脱衣ロッカーが多数並んでいます。脱衣場、浴室内とも空いていて、他の客と密接することもなく、ゆったりと温泉を楽しめました。

 洗い場は仕切り付きで18ヶ所とシャワーブースがあり、ボディソープとリンスインシャンプーがあります。この洗い場は配置が秀逸であり、限られたスペースに効率よく配置されています。

 内湯には、大浴槽、ジャグジー浴槽、水風呂、ドライサウナがあります。サウナは密閉空間を避けるため利用しませんでした。
 当初は大浴槽の一角に打たせ湯があったのですが、廃止されて久しくなります。大浴槽内の打たせ湯ですので、実際に使用しますと湯が浴槽中に飛び散って、他の客に迷惑が掛かり、明らかな設計ミスと思われるものでした。

 大浴槽、ジァグジー浴槽には茶濁りの湯が満ちており、アンモニア臭・ヨード臭が入り混じった芳香が漂っています。湯温は、私の体感で42℃程度であり、温まりは良かったです。
 浴槽は空いていて、気兼ねなくゆったりと湯に浸かることができました。十分に温まったところで、窓から露天風呂を覗いてみますと、誰もいないようでしたので、露天風呂に移動しました。

 露天風呂には大きな巨石風呂がひとつあり、階段を上って浴槽に浸かりますが、先客はおらず、独り占めでした。
 塀に囲まれて景色は見えませんが、吹き抜ける風は爽やかで、晴れ渡る空を見上げながら、癒しのひとときを過ごしました。
 湯温は内湯より高めで43℃程度で、温まりは内湯より良く、出たり入ったりしながら、ストレスがたまった心身をリセットしました。
 次の客が来るまで浸かっていようと頑張りましたが、なかなか客が来られず、ゆでダコ状態になってしまいました。

 この露天風呂の横の木には、たくさんの赤い実がなっていました。何の実かわからなかったので、常連さんらしき人に聞いてみましたが、わからないとのこと。年配の係員にも尋ねましたが、やっぱりわからないとのことでした。

 さて、脱衣場入り口に、令和元年7月21日付の分析表が掲示されています。

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 源泉名は、紫雲寺温泉。泉質は、ナトリウム-塩化物強塩泉(高張性中性高温泉)。源泉温度 54.8℃。PH 6.8。湧出量 89L/分(動力揚湯)、掘削深度 1330.5mです。
 主な成分(イオン濃度:mg/kg)は、Li 5.0、Na 11800、K 421.8、NH4 454.6、Mg 144.9、Ca 803.4、Sr 5.4、Ba 3.2、Al 0.0、MN 0.3、Fe(II) 4.5、Cu 0.0、Zn 0.0、F 0.0、Cl 22000、Br 146.5、I 97.3、NO2 0.0、NO3 1.4、HS 0.0、HSO4 0.0、S2O3 0.1、SO4 3.3、HPO4 0.0、HCO3 659.0、CO3 0.0、メタケイ酸 121.9、メタホウ酸 121.0、遊離CO2 87.8、遊離H2S 0.0、など、ガス性除く成分総計は36794mg/kgです。

 源泉温度が高いので、40℃位になるよう指示計で制御し、水道水を加水、入浴に適した温度に保つため加温、設定温度から2℃下がると加温、衛生管理と浴槽内の温度を維持するため、常に循環濾過装置を使用、衛生管理のため、塩素系薬剤による消毒を実施、定められた濃度になるように、タイマーで調整、非塩素系薬剤を1日に1回併用して消毒、浴槽の換水・清掃は男湯と女湯を交互に毎日実施、浴室内は毎日清掃、水質検査は2カ月に1回実施し、結果をフロントに掲示、入浴剤は使用していない と掲示されています。

 実際の湯は、若干緑がかった茶色で微濁、アンモニア臭、ヨウ素臭が入り交じった芳香が気持ち良く、軽いツルスベ感もあり、舐めれば当然ながら塩辛いです。温まりは良くて、湯上がりの汗はなかなか引きません。
 循環湯ではありますが、濃厚な泉質ですので、劣化は感じにくく、強塩泉の魅力が味わえるいい湯だと思います。

 なお、この分析表に誤りがありますが、お気づきになりましたでしょうか。よう化物イオンが97.3mg/kgあり、この量は県内でも最高クラスです。
 「よう素泉」の基準(10mg/kg)を遥かに超えていますので、正しい泉質名は、含よう素-ナトリウム-塩化物強塩温泉となります。
 平成26年に鉱泉分析法指針が改定されて「よう素泉」が規定されて8年にもなるのですが、いまだに「よう素泉」が軽視されているのでしょうか。こんな単純ミスがあるのは残念です。

 参考までに、前回(平成21年8月)の分析では、HS 1.4mg/kg、S2O3 0.1、遊離H2S 2.6mg/kgと、総硫黄が硫黄泉の基準(2mg/kg)を超えて、泉質は含硫黄-ナトリウム-塩化物強塩泉となっていました。現在の分析表(令和元年7月)では硫黄分は含まず、泉質名から「含硫黄」は消えました。
 元来が濃厚な強塩泉であり、アンモニウムイオンやよう化物イオンを多量に含みますので、多少の硫黄分があってもなくても、体感上の泉質には変化は全く感じられません。

 浴後は、噴き出す汗をバスタオルで拭きながら、ロビーの椅子でクールダウン。コーラで喉を潤しました。

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 「生」と書いてあると美味しそうに見えますね。実際に美味しかったです。

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 その後はこの原稿を書きながらひと休みし、体が冷えてきたところで、もう一度入浴を楽しみました。
 露天風呂は先客がおられて利用せず、空いていた内湯大浴槽で無念無想。頭を空にしました。さすがに夕方になり、混みあってきましたので、早々に退室しました。

 湯上がりの汗は引かず、ロビーで再びクールタウンしました。

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 奥に休憩所があるので覗いてみました。

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 畳敷きの広間があって休憩できるのですが、真っ暗でした。

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 2階に休憩用広間と「紫陽花」という食事処があります。

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 広々としており、ゆったりと食事することができます。お座敷なのですが、掘りごたつ式に足を下せるのがありがたいです。メニューは豊富です。

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 この温泉では「とらぶぐ」の養殖をしていたのですが、思い通りの採算は得られなかったようです。
 以前この食事処で「とらふぐ」のメニューを食べたことがありましたが、現在は予約制で、3日前までに予約する必要があります。

 早めの夕食をいただきました。

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 生姜焼き定食950円。値段相応かと思います。賑やかに談笑している地元のご婦人方を横目に、美味しくいただきました。

 食後はロビーでひと休み。

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 腹が落ち着いたところで、もう一度〆のひと風呂をいただき、退館しました。

 温泉もさることながら、充実した施設が魅力です。1日ゆっくりと過ごすことができます。
 値上げラッシュの昨今にあって、600円、タオル付きでも700円という低料金は貴重です。近くならもっと行くのですけれど。地元の人がうらやましいです。