あれ? 源泉が・・ どうしたの? 「スノーピーク温泉」

 2022年4月15日に、キャンプ用品の高級ブランドとして有名なスノーピークの本社の広大な敷地内に「Snow Peak FIELD SUITE SPA HEADQUARTERS」がオープンしました。
 レストランや食事処、宿泊施設を備えた複合型リゾート温浴施設ですが、面倒ですので、今回の記事でも勝手に「スノーピーク温泉」とさせていただきます。
 昨年4月のオープン直後に利用させていただき、
隈研吾さん設計によるデサイン性に優れた建物に圧倒され、セレブな雰囲気と眺めの良さ、備品類の上質さ、そして源泉の優秀さに感激しました。
 その後、5月に再訪し、掲示されている分析表(単純温泉)以上に濃厚で、魅力ある泉質に感動を新たにしました。
 そして、県民割を開始した昨年11月にも再訪しましたが、実際の泉質と同等の分析表が新たに掲示されていて、泉質はナトリウム-塩化物冷鉱泉になっていました。
 あれから時がたち、冬を越えて、桜咲く春が来ました。オープン後1年になる「スノーピーク温泉」の現状を探るべく、好天に誘われるまま、久しぶりに行ってきました。

 車を更新したところ、カーナビの調子が悪く、途中でフリーズしてしまって何の役にも立たないので、看板とおぼろげな記憶を頼りに向かいました。
 三条の下田市街から案内板に従って農村の道を進みました。途中の道路から粟ヶ岳が見えました。

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 青空をバックに雪を抱いた山容は、ひときわ美しく感じられました。

 黒い案内板に従って小道を進み、
細い坂道をカーブしながら上がりますと、急に視界が開け、スノーピークの本社やキャンプ場がある広大な空間が広がります。別世界に来たかのようであり、非日常を味わうには良いですね。
 スノーピークの本社を右に見て、さらに奥に進みますと、右に広大なキャンプフィールドが広がり、そして左手に「スノーピーク温泉」の洒落た建物が見えてきます。

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 左手の駐車場に車をとめて、玄関に向かいます。建物の右側には高級なグランピング施設があり、ヴィラ棟が3棟、モバイルハウス(住箱)が4棟があります。

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 木々の間から粟ヶ岳が透けて見えました。

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 では、玄関に向かいましょう。

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 中に入りますと、商品が陳列されていて、高級イメージに合わない雑然感を感じますが、左右ともガラス張りで、明るく開放感があります。

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 奥の左側に券売機が2台ありますので、入浴券を購入します。

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 入館料は、一般料金が、大人1,600円、子供1,100円、スノーピーク会員料金が、大人1,400円、子供1,100円、県民割が、大人1,400円、子供1,100円で、タオルセット付きです。

 入浴券を右手の受け付けに提出して、タオルセットとロッカーキーを受け取ります。なお、県民割を利用する場合は、免許証等の住所を証明する物の提示が必要です。

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 階段を降りて、地階にある浴室へ向かいます。

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 左手の下足箱に靴を入れますが、鍵はロッカーキーと共用です。

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 浴室は、右が男湯、左が女湯なのですが、ときにより入れ替わることがあり、先回来たときの男湯は左側でしたが、今回は通常通りの右側の浴室でした。右の浴室の方が木々で視界が遮られれず、眺めが良いのでラッキーでした。

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 左の浴室は少し奥まって作られており、その分木々が視界を遮るのですが、女湯ということを考えてのことと思います。また、洗い場の数を多くしてあるのも、女性に配慮しているものと思います。

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 鍵を入口のセンサーにかざしますと扉が開きます。

 中に入りますと、ダークブラウンの色調の脱衣場となっており、広くはないのですが、落ち着いた雰囲気であり、高級感が漂っています。
 ロッカーは木製で、
ロッカー・脱衣スペースが2ブロックずつ計4ブロックあり、その間に洗面・化粧スペースが2ブロックあります。2か所に紙コップ式の給水器があり、紙コップをかざしますと自動的に水が出ます。
 洗面台のシンクはデザイン性に富んだステンレス製で、手をかざしますと水が出る自動水栓になっています。
 ダイソン製の高級ドライヤーのほか、高級そうな化粧水・乳液類があり、化粧用コットンや黒い綿棒もあります。いずれも通常の温浴施設とは一線を画すセレブ感を感じます。

 浴室は細長く、決して広くはありませんが、シックな色調で、間接照明の室内は、落ち着きを感じます。
 入って左に水風呂、正面にサウナ、右に洗い場、窓際に横に細長い大浴槽があります。大きなガラス壁になっていて、ガラス越しに露天風呂や外の景色を見渡すことができます。

 まずは洗い場で洗身します。洗い場は、
4か所ずつのブロックが3ブロックあり、計12か所あります。外を向くように配置され、高さが低いため、身体を洗いながら外の景色を見れるような設計になっています。
 鏡は正面ではなく左側にあり、内側を向くように斜めに設置されており、高級そうな容器に入ったボディソープ、シャンプー、コンディショナー、洗顔用ソープがあります。
 初めて来たときは、デザイン優先のカランやシャワーの操作が分かりにくかったのですが、もう迷うことはありません。
 この洗い場で、
前回と違った所がありました。以前は新潟県産の杉材を使った洗い桶と洗い椅子があったのですが、ブラスチック製になっていました。ただし、椅子はどっしり感があり、安物感はなく高級感を感じます。

 さて、大浴槽に浸かりましょう。浴槽には無色透明の湯が満ちていて、右端の壁際の天井から伸びたパイプから、非加熱源泉が注がれていました。以前は壁が温泉成分によりこげ茶色に変色していましたが、きれいになっていました。
 窓際の浴槽の縁がなく、湯に浸かった状態ですと、湯面と外の景色が一体化する、いわゆるインフィニティ風呂となっています。一面のガラス壁と相まって、眺めの良さは素晴らしいと思います。
 湯温は私の体感で40~41℃程度と低めで、浴槽内の手前側の底にある加熱源泉注入口で温まりました。

 今回の話題です。前回までは淡黄色透明だった湯は、無色透明になり、軽い塩味と芳香、トロトロ・ツルスベ感があった湯は、無味無臭となり、さらりとした湯になっていました。これはどうしたことでしょう。
 これはこれで、刺激のない柔らかな単純温泉と考えれば不満はないのですが、以前の泉質を知る者としましては残念に感じました。

 重いガラスのドアを2つ開けて、露天風呂に移動しました。内湯と同様に、浴槽の外側には枠がなく、入浴時の視線では、湯面と景色が一体化します。
 建物側にある金属製の注湯口からは非加熱源が注がれており、浴槽底の手前2か所から加熱源泉が供給されています。
 お湯は内湯同様に無色透明無味無臭のさらりとした湯でした。湯温は41℃程度でぬるめでしたので、浴槽底の加熱源泉注入場所で温まりました。
 景色は素晴らしく、眼前に広がる下田の自然。その先にそびえる粟ヶ岳の雄姿。この景色を前にしますと、泉質が変わったなどと不平を言うことなど意味がないように思えます。

 実は、この日は若者のグループが何組も来ていて、非常に混雑していたのですが、距離を取りながら、空いたタイミングを見て温泉を楽しみました。

 人気のサウナは当然ながら混んでいましたが、グループ行動する若者たちが、サウナから出てきたタイミングでサウナを利用しました。
 大きなガラス窓からは、露天風呂からの景色と同様に、粟ヶ岳が一望され、眺めの良さは県内でも最高ではないでしょうか。
 円筒形のサウナストーブを取り囲むように席がありますが、焚火を囲むというコンセプトなんだそうです。
 若者が用意されている柄杓でサウナストーンに水をかけてロウリュしてくれて、よく温まりました。

 サウナ後は、外の露天風呂の先にあるデッキでクールダウンしました。スノーピーク製の高級キャンプ用椅子が何種類か並んでいます。
 右手には桜が咲き誇り、正面には粟ヶ岳。春の空気を全身に浴びてリラックス。気持ちいいですねえ・・。

 その後は露天・内湯と、温泉をたっぷりと楽しみ、浴室を後にしました。

 さて、先回来たときは、2022年5月11日付の新しい分析表が掲示されていて、泉質は、ナトリウム-塩化物冷鉱泉(低張性・中性・冷鉱泉)。源泉温度 18.3℃で、ガス性除く成分総計は1582mg/kgでした。ところが今回は、昨年5月に来たときと同じ平成29年7月25日付の古い分析表に戻っていました。

 源泉名は、雪峰温泉。泉質は、単純温泉(低張性・弱アルカリ性・低温泉)、源泉温度32.4℃、使用温度:内風呂42℃、露天風呂43℃。
 主な成分(イオン濃度:mg/kg)は、Li <0.1、Na 147.5、K 10.7、NH4 3.2、Mg 4.6、Ca 11.0、Sr 0.1、Ba 0.3、Al <0.1、Mn <0.1、Fe(II) 1.3、Fe(III) <0.1、F <0.1、Cl 231.6、Br 1.4、I 0.5、HS <0.1、S <0.1、S2O3 <0.1、SO4 13.4、HCO3 84.0、CO3 0.2、メタケイ酸 83.6、メタホウ酸 1.0、メタ亜ヒ酸 <0.1、遊離CO2 19.0、遊離H2S <0.1 など、ガス性成分総計は594.7mg/kg(溶存成分総計 613.8mg/kg)です。(掲示では、成分総計がg/kgで表示されていましたが、通常のmg/kgに直しました。)
 湯使いについては、加水なし、加温あり(適温を維持するため)、循環あり(温泉資源の確保と衛生管理のため)、消毒あり(衛生管理のため塩素系消毒を実施)とのことです。

 この分析表の数字を見ますと、まさに現在の浴槽の泉質を反映しているように思います。
 よくわかりませんが、2つの源泉があるのでしょうか。現在の源泉は単純温泉で良いと思うのですが、先回まで使用されていたナトリウム-塩化物冷鉱泉はどこに行ってしまったのでしょうか。

 疑問に思いながら、食事処の手前のベンチでクールダウンしました。

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 ここからも粟ヶ岳が展望できました。

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 タオルとバッグを返却場所に返却。

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 靴を履き、鍵の返却ボックスに鍵を入れて、退館手続きは終了です。

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 1階へと上がり、展示されている商品を眺めて退館しました。

 玄関を出て振り返りますと、この屋根には圧倒されてしまいます。この奇抜なデザインは大したものですね。

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 泉質の変化を除けば、浴室もサウナも素晴らしく、眺めの良さも考え合わせますと、高額な値段分は十分に楽しめると思います。
 公式ホームページの温泉のページでの記載ではナトリウム-塩化物冷鉱泉になっていますが、フロアマップのページでは弱アルカリ性単純温泉と記載され、脱衣場の掲示も単純温泉です。
 実際の浴槽の湯は、前回までは確かにナトリウム-塩化物冷鉱泉でしたが、今回は明らかに単純温泉です。いつ、どうして変わってしまったのか混乱するばかりです。

 源泉の問題は別にして、館内は広くなく、食事処以外の休憩場所がないのが最大の問題です。
 「Snow Peak FIELD SUITE SPA HEADQUARTERS」という施設名が示しますように、一般の日帰り温泉とはコンセプトが異なり、休憩所でゴロゴロしたり、安楽椅子で昼寝するような客は想定していないのでしょうね。この点は残念に思います。
 レストランで食事でも、という思いは持っていますが、実現しそうもありません。ましてやグランピングなどは夢の世界です。

 ということで、スノーピークの話題でした。でも、くどいですが源泉はどうしちゃったのでしょうね。