糸魚川市 柵口温泉「権現荘」の今後

 6月27日付の新潟日報記事に、糸魚川市が柵口温泉「権現荘」を民間譲渡する方針を決定したという記事が出ていました。

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 「権現荘」は今年度からの指定管理者の応募がなく、現在市の直営で日帰り入浴だけでの営業を継続していますが、今後10年間は日帰り入浴の営業を継続することを条件に民間譲渡することになりました。
 記事には詳しく書かれていませんでしたので、これまでの経緯についてまとめてみたいと思います。

 糸魚川市の柵口温泉「権現荘」は、柵口地区の閉校した小学校の校舎を利用して、1988年にオープンし、隣接する市営の入浴施設「柵口温泉センター」とともに親しまれてきました。私も訪問して両館とも利用したことがありました。
 しかし、当初は黒字経営でしたが、2004年度以降は赤字経営となり、赤字分は市の一般会計から補填されていました。
 経営再建のため、2009年4月からは、民間から支配人を採用しましたが、改善することなく赤字は膨らむばかりでした。
 この問題は市議会でも議論され、指定管理者制度への移行・民営化が検討されましたが、赤字経営や施設の老朽化の問題があって実現できませんでした。
 市は、施設の老朽化と慢性的な赤字の打開策として、リニューアルして黒字転換を図り、指定管理者制度へ円滑に移行させる方針を打ち出しました。そして約4億円の巨費を投じて改修し、2015年8月にリニューアルオープンしました。これに伴い「柵口温泉センター」は同年7月末で廃止され、「権現荘」に一本化されました。
 フロントやロビー、売店、レストラン等は一新され、露天風呂には屋根が付けられて冬季も利用できるようになりました。
 浴室には「低温ナノミストサウナ」が設置され、「〇(まる)の湯」という円形の浴槽が特徴の浴室も新設されました。

 当初はリニューアルオープンに合わせて指定管理者制度に移行する予定でしたが、市の方針が変わって、2年間は市の直営で黒字転換させてから指定管理者制度へ移行させることになりました。
 しかし、その後も赤字経営が続き、支配人による放漫経営が問題視されたこともありました。
 結局黒字転換はできないまま、2017年4月から指定管理者制度に移行しました。2023年3月までの2期6年間は「マリンドリーム能生」を運営する市の第3セクター「能生町観光物産センター」が指定管理者として運営しましたが、赤字経営が続きました。
 そして、2023年4月から2006年3月末までの3期目の指定管理者を募集しましたが、結局応募者はありませんでした。

 そのため、2023年3月末で指定管理者での営業は終了し、その後は当面市の直営で日帰り温泉のみの営業を継続することになりました。
 経費削減のため、施設の使用範囲を必要最小限に絞り、レストランや2~4階の客室(計30室)などは使用しないこととなり、宿泊営業はせず、日帰り入浴のみとすることになりました。

 新たな体制により、4月21日~24日までプレオープンとしての営業を行った後、4月25日に通常営業を開始しました。
 男女大浴場・露天風呂と休憩室のみでの営業で、宿泊や飲食の営業は行わないため、飲食物の持ち込みは可能で、笹寿司等の出前もできるそうです。また、売店では地元野菜等の販売を行っているとのことです。

 入浴料金は、大人(中学生以上)600円、小学生310円、幼児(3歳以上の未就学児)200円、市内の65歳以上の高齢者は400円です。営業時間は9時から21時で、最終受付は20時30分です。定休日はありません。

 そして、糸魚川市は、6月26日に開かれた市議会建設産業常任委員会で「権現荘」を民間に譲渡する方針を示し、公募型プロポーザルの実施案を提示しました。
 今後10年間は日帰り入浴の営業を継続することを条件に、事業者は7月末までに事業計画書などを提出し、選定委員会で審査されることになります。どのような形で決着するのか、注視していきたいと思います。