硫黄泉が恋しくて 咲花温泉「柳水園」

 寒い時期には熱めの強塩泉が最適ですが、熱めの硫黄泉も、硫化水素の血管拡張作用によって温まりの良さでは負けていません。そこで、今回は硫黄泉を楽しむことにしました。
 新潟県下越地方で硫黄泉といえば月岡温泉がその代表ですが、咲花温泉も魅力ある硫黄泉です。
 咲花温泉に来るのは久しぶりで、昨年10月に「一水荘」を利用して以来になります。今回は熱くて鮮度の高い源泉を掛け流しで楽しむことができる「柳水園」に行くことにしました。昨年7月以来、半年ぶりの利用になります。

 国道49号線から馬下橋で阿賀野川を渡って、対向車も来ない暗い夜道を川沿いに進み、咲花温泉に到着しました。
 咲花駅前を左に折れて、咲花温泉街に入りましたが、すぐにある某旅館には明かりがなく、真っ暗で静まり返っていました。冷たい雨が降る平日夜の温泉街には、人の気配はありませんでした。

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 温泉街の道路は真っ暗闇で、「柳水園」に上がっていく坂道もわかりにくいほどでしたが、看板の明かりが優しく迎えてくれました。

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 冷たい雨が降っていて視界が悪く、道幅に注意しながら坂道を上がりますと、その先は広場になっており、車をとめました。

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 真っ暗な中に、玄関の明かりが迎えてくれます。

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 ガラスの引き戸を開けて中に入り、スリッパに履き替えます。

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 声をかける間もななく、奥から女将さんが出て来られましたので、500円を払って、廊下を奥に進みました。

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 ステンレスの流し台の奥に浴室があり、手前が男湯、奥が女湯です。

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 観葉植物の葉に、男湯という札が下がっています。

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 暖簾の裏のガラス戸を開け、階段を3段降りたところが脱衣場です。

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 脱衣場に入りますと、ほのかに硫化水素臭を感じ、気分が盛り上がりました。脱衣棚に脱衣籠が12ヵ所、洗面台が1つありドライヤーがあります。そして、狭い脱衣場には似合わないソファがあります。

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 ガラス戸を開けて浴室内に入りますと、もうもうと湯気が立ち込めており、先客が1人おられました。

 決してきれいとは言えない浴室には、洗い場が2か所あり、ボディソープ、リンスインシャンプーがあります。反対側にはケロリンの黄色い洗い桶が積まれています。
 入浴前に、先客に遠慮しながら洗身しましたが、シャワーの出は悪く、最高温にしてもぬるかったです。

 壁が朽ち果てた狭い浴室内には、浴槽が1つあるのみです。浴槽には無色透明の湯が満ちており、隅にある注湯口から注がれた湯は、浴槽の縁からオーバーフローされて、掛け流しされています。  
 先客は浴槽の右横の狭い場所で休んでおられましたので、誰もいない浴槽にそっと浸かりました。
 湯温は43~44℃程度の適温で、ほのかな硫化水素臭を味わいながら気持ち良く湯に浸かりました。
 先客が浴槽に入って来られたときに、一旦湯から出て浴槽の縁でひと休みして、その後に再び入浴して湯と語り合いました。

 先客が出るのを待って、浴室の独り占めをもくろみましたが、先客は浴槽の縁で長時間休んでおられ、根負けして浴室を後にしました。
 ということで、今回は浴室の写真はありません。浴室内の様子は、独り占めできた前回のブログをご覧ください。
 ちなみに、先客の背中にはきれいな絵が描かれていました。その道を極めておられるお方でしょうか。
 この粋なお兄さんと二人きりの浴室でしたが、言葉を交わすこともなく、お互いに気を使いながら温泉を楽しみました。

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 平成26年10月26日付けの分析表によりますと、源泉名は,咲花温泉6号。泉質は、含硫黄-ナトリウム・カルシウムー塩化物・硫酸塩温泉(弱アルカリ性低張性高温泉)。源泉温度 48.3℃、使用位置 46.3℃です。
 主な成分(イオン濃度:mg/kg)は、Li 0.2、Na 233.1、K 7.0、NH4 0.8、Mg 0.8、Ca 75.7、Sr 1.2、Ba 0.0、Al 0.0、Mn 0.0、Fe(II) 0.0、Cu 0.0、Zn 0.0、F 1.7、Cl 286.4、Br 0.9、I 0.4、NO2 0.0、NO3 0.0、HS 20.5、HSO4 0.0、S2O3 7.6、SO4 281.7、HPO4 0.2、HCO3 45.2、CO3 0.0、メタケイ酸 55.5、メタホウ酸 3.4、遊離CO2 2.5、遊離H2S 3.7 など、ガス性除く成分総計は、1022mg/kgです。
 加水なし、加温なし、循環ろ過なし、入浴剤の使用なし、温泉の入れ替えを毎日行っており消毒剤の使用なし、浴槽は毎日換水し浴室は毎日清掃、レジオネラ属菌と大腸菌群の検査を年1回以上実施とのことです。

 硫化水素イオンが20.5mg/kg、チオ硫酸イオンが7.6mg/kg、遊離硫化水素が3.7mg/kgと硫黄分は多く、月岡温泉や多宝温泉には及ばないものの、県内でも屈指の硫黄泉といえます。
 この良質な源泉が、手を加えず、そのまま掛け流しされています。浴槽は大きくないため、掛け流し量も十分です。
湯が透明なのは鮮度が高い証です。
 咲花温泉の本来の味わいを楽しむなら、ここが一番であることには誰も異論はないでしょう。
 昭和レトロの館内、朽ち果てて、決してきれいとは言えない浴室ではありますが、泉質の良さを前にしますと、些細なことでしかありません。

 このような素晴らしい源泉を500円で楽しむことができます。純粋に温泉を味わい、古さ汚さも風情ある魅力として感じることができる温泉好きの皆さんには自信をもってお勧めできます。
 逆に言えば、そうでない人にはお勧めできません。狭い浴室ですので、混雑時は他の客と譲り合って楽しむ心が必要ですので、そのつもりでご利用ください。

 女将さんに挨拶して退館し、雨降る中に車に小走りし、人の気配のない静かな咲花温泉街を後にしました。
 雨が降る平日の夜ではありましたが、温泉街らしさは全くなく、寂しさは禁じえませんでした。
 魅力ある旅館が次々に閉館していき、昨年秋には「ホテル平左エ門」が閉館し、残る旅館は少なくなってしまいました。
 活気が失われた咲花温泉ではありますが、温泉の魅力としては素晴らしいですので、何とか頑張っていただきたいと思います。