値段相応の満足感、かな? 「スノーピーク温泉」

 三条市の下田地区の丘陵の上のスノーピーク本社の敷地内に、2022年4月15日にオープンした温泉施設が「Snow Peak FIELD SUITE SPA HEADQUARTERS」です。面倒くさいので、今回も「スノーピーク温泉」と呼ばせていただきます。
 先日久しぶりに行ってきたのですが、昨年5月以来ですので、なんと11ヵ月ぶりということで、自分でも驚いています。
 場所は分かりにくいのですが、カーナビがなくても、下田市街から要所に黒い看板が出ていますので、たどり着けるでしょう。毎度のことながら、細い山道を登ると現れる広大な平原には驚かされます。
 キャンプ用品の高級ブランドのスノーピークの本社の洒落た社屋を右に見ながら奥に進んで行きますと、左手に「スノーピーク温泉」があります。向かいには広大なキャンプフィールドが広がっています。

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 左手に駐車場がありますので、車をとめて、玄関へと向かいます。

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 右手には高級なグランピング施設のヴィラ棟が3棟、モバイルハウス(住箱)が4棟がありますが、明かりがついていており、宿泊客で賑わっているようでした。うらやましいですね。

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 隈研吾さん設計によるスタイリッシュな建物、そして薪がびっしりと並べられた天井は壮観であり、私のような田舎者は圧倒されてしまいます。

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 玄関を入りますと、ガラス張りの明るい館内が迎えてくれますが、せっかくの美しい空間に、スノーピークの商品がいろいろ販売されていて、雑然とした印象を受けてしまいます。

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 左奥に進んだ先に画面タッチ式の券売機が2台ありますが、これまでと配置場所が違っていました。
 入館料は、一般料金が、大人1600円、子供1100円、スノーピーク会員料金が、大人1400円、子供1100円、県民割が、大人1400円、子供1100円で、タオルセット付きです。
 受付にレシートを渡しますと、タオルセットとロッカキーが渡されます。県民割を利用する場合には、新潟県民を証明する免許証等の提示が必要です。
 当初は、タオル付ながら1600円(県民割1400円)という高額な料金に恐れおののきましたが、昨今の値上げラッシュの渦中にあって耐性が付き、それほどの高額には感じなくなりました。「極楽湯」の休日のタオル付料金は1200円ですし、「ヴィネスパ」の休日料金は、タオルなしで1500円で、タオル付ですと1850円にもなりますから。

 浴室は階段を降りた地階にあります。

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 正面に浴室入口、右奥に食事処、左に下足箱があります。ここで靴を脱ぎ、ロッカーキーと同じ番号の下足箱に靴を入れます。

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 浴室入口にロッカーキーをかざしますと、ガラスのドアが開きます。

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 右が男湯、左が女湯です。1回だけ入れ替わって、左の浴室を利用したことがありましたが、木々に遮られて、右の浴室より眺めが若干悪いように感じました。

 中に入りますと、ダークブラウンの色調で、間接照明のシックなデザインの脱衣場となっており、広くはないのですが、高級感が漂っています。
 ロッカーは木製で、ロッカー・脱衣スペースが2ブロックずつ計4ブロックあり、その間に洗面・化粧スペースが2ブロックあります。2か所に紙コップ式の給水器があり、紙コップをかざしますと自動的に水が出ます。
 洗面台のシンクはデザイン性に富んだステンレス製で、手をかざしますと水が出る自動水栓です。
 以前はダイソン製の高級ドライヤーがありましたが、今回はパナソニック製になっていました。そのほか、高級そうな容器に入った化粧水・乳液類があり、化粧用コットンや黒い綿棒もあります。
 脱衣場内にある籐製椅子も高級感があり、ごみ箱も電動式になっていて、戸惑ってしまいます。
 すべての設備、備品には高級感が漂い、通常の温浴施設とは一線を画すセレブ感を感じます。さすがに高級ブランドのスノーピークですね。

 浴室は、脱衣場同様に間接照明で、高級感あふれる落ち着いた雰囲気です。浴室に入って、すぐ左に深い水風呂があり、その先にサウナがあります。右には洗い場があり、窓際に細長い大浴槽があります。浴室の外側はガラス壁になっていて、シックな雰囲気の中にも開放感があり、外の景色を見渡すことができます。

 洗い場は4か所ずつ3ブロックが直線状に並び、ボディソープ、シャンプー、コンディショナー、洗顔ソープが、高級そうな容器に入って置かれています。
 鏡は正面でなく、左側に配されており、高さが低く抑えられているため、洗い椅子に座った状態で、外の景色を眺めることができるようになっています。
 シャワーやカランはデザイン優先で、最初は使い方がわからず、戸惑ってしまいました。今では悩みませんけれど。
 なお、当初は新潟県産の杉材を使った重厚な洗い椅子と洗い桶が置かれていましたが、昨年からプラスチック製になってしまいました。それでも椅子はどっしりと重厚感があり、高級感が感じられます。

 大浴槽は窓際に長く延びていて、手前側には木材が張られ、窓際は浴槽の縁がなく、湯に浸かった状態では湯面と景色が一体化する、いわゆるインフィニティ風呂になっています。
 ガラス壁越しに露天風呂や外の景色を眺めることができ、眼下に下田の農村風景、その先に粟ヶ岳の雄姿を望むことができます。
 浴槽には無色透明な湯が満ちており、浴槽の左奥の天井から伸びた金属パイプから、非加熱源泉が注がれています。
 これとは別に、浴槽の底の手前側4か所に加熱源泉の供給があり、窓際の4か所から吸引があります。
 窓際の浴槽の縁からオーバーフローがありますが、これは非加熱源泉の供給分で、浴槽内での循環が主体となっています。
 単純温泉の湯は、ごくわずかの薬臭・薬味が感じられましたが特徴が乏しく、湯温は40~41℃程度とぬるめであり、浴槽の底の加熱源泉注入場所で温まりました。この日は木片が入れられた布袋が4つ湯面に浮かべられていましたが、その有難みは感じられませんでした。

 重い扉を2つ開けて外に出ますと四角形の露天風呂があります。内湯同様に、外側には縁がなく、湯に浸かりますと、湯面と景色が一体化します。
 手前側中央に、金属製の注湯口があり、非加熱源泉が供給されています。浴槽の底の手前側2か所に加熱源泉の供給があり、外側2か所に吸引があります。
 循環湯ではありますが、湯に浸かりますと、ザバーっと外側にオーバーフローされて、掛け流し気分を味わうことができます。
 湯は、内湯より温泉らしさが感じられ、薬臭・薬味が内湯より若干ながら強く感じられました。ここには内湯にあった木片が入った布袋はありませんでした。湯温は41℃程度でしたので、加熱源泉供給場所であたたまりました。
 
 そして、サウナマットを持ってサウナに入りますと、外側はガラス窓になっていて、下田の自然や、粟ヶ岳を眺めながらサウナを楽しむことができます。
 部屋の中央に円筒形に積み上げられたサウナストーンがあり、その周りを8角形の黒い柵が取り囲んでいます。
 そのサウナ装置を取り囲むように席が設けられていて、そこからの眺めは素晴らしく、県内でも最高レベルのサウナではないかと思われます。
 バケツに入った水と柄杓が準備されていて、ロウリュすることができます。ひとりでしたらロウリュするところでしたが、座禅の姿勢で無念無想で楽しんでおられる他の客を見ますと、勝手にロウリュすることはためらわれました。

 サウナの後は水風呂ですが、かなりの深さがあって、気持ち良かったです。ここにも木片が入った小さな布袋が2つ浮かべられていました。
 浴室内や外には、スノーピーク製のキャンプ用折り畳み椅子が並べられていて、クールダウンして「ととのう」ことができます。

 サウナとクールダウンを2コース楽しみ、内湯・露天風呂と、外の景色を見ながら、温泉も十分に楽しんで浴室を後にしました。

 さて、開業当初に使用されていた源泉は、ナトリウム-塩化物冷鉱泉(源泉温度 18.3℃、ガス性除く成分総計が1582mg/kg)でした。加熱循環されていましたが、淡黄色透明で、わずかな芳香があり、トロトロ感・ツルスベ感があって、自己責任でなめてみますと、軽い塩味がある魅力的な湯でした。それが、昨年から現在の源泉に代わってしまいました。

 現在使用されている源泉は、平成29年7月25日付の分析書によりますと、
 源泉名は、雪峰温泉。泉質は、単純温泉(低張性・弱アルカリ性・低温泉)、源泉温度は、32.4℃で、使用温度:内風呂42℃、露天風呂43℃です。
 主な成分(イオン濃度:mg/kg)は、Li <0.1、Na 147.5、K 10.7、NH4 3.2、Mg 4.6、Ca 11.0、Sr 0.1、Ba 0.3、Al <0.1、Mn <0.1、Fe(II) 1.3、Fe(III) <0.1、F <0.1、Cl 231.6、Br 1.4、I 0.5、HS <0.1、S <0.1、S2O3 <0.1、SO4 13.4、HCO3 84.0、CO3 0.2、メタケイ酸 83.6、メタホウ酸 1.0、メタ亜ヒ酸 <0.1、遊離CO2 19.0、遊離H2S <0.1 など、ガス性成分総計は594.7mg/kg(溶存成分総計 613.8mg/kg)です。(掲示では、成分総計がg/kgで表示されていましたが、通常のmg/kgに直しました。)
 湯使いについては、加水なし、加温あり(適温を維持するため)、循環あり(温泉資源の確保と衛生管理のため)、消毒あり(衛生管理のため塩素系消毒を実施)とのことです。

 この源泉については紆余曲折がありました。2022年4月の開業時には、なぜか温泉の分析書・効能・禁忌等の掲示がなく、申し入れさせていただきました。
 その後、5月に行ったときには分析書が掲示されましたが、その掲示内容は上記の平成29年7月25日付のものでしたが、浴槽の湯は、濃厚であり、単純温泉とは思えず、不思議に思っていました。
 そして、秋に再訪したときには、2022年5月11日付の新しい分析書になっていました。源泉名は雪峰温泉と同じなのですが、泉質は前記しましたように、ナトリウム-塩化物冷鉱泉に変わっていて、実際の浴槽の湯を反映していました。
 ところが、2023年春に行ったときには、源泉の性状が変わっていて、無色透明でさらりとした現在の湯になりました。開業当初から内湯の天井からのパイプの注湯口付近の壁は茶褐色に変色していましたが、その壁もきれいになっていました。掲示されている分析書も、開業当初の平成29年7月25日付の分析書に戻り、現在に至っています。
 現在の泉質が、開業当初に掲げられていた分析書と同等なので、本来の源泉と言って良いはずなのですが、開業当初に使用されていたナトリウム-塩化物冷鉱泉はいったい何だったのか、そして現在はどうなっているのか疑問に思います。
 こんなことに悩んでいるのは私くらいでしょうね。まあ、どのみち循環湯であり、泉質の良さというより、設備の良さや景色の良さを楽しむべき温泉だと思いますので、皆さんは気にしないでお楽しみください。

 さて、この温泉の最大の問題点は、休憩場所の少なさでしょう。

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 食事処への通路に腰かける場所はありますが、食事処を利用せずに寛げる場所がありません。仮眠室と言わなくても、安楽椅子やソファが並ぶ場所があっても良いのにと思います。現状ではそのようなスペースはないですので、改善は難しいでしょうね。せめて清涼飲料の自販機でもあればと思うのですが。
 入浴やサウナを楽しんだら、食事処や1階にある高級レストランで食事をして、さっさと帰ってくれというところなのでしょう。
 キャンプ用品のトップブランドとして高級路線を歩むスノーピークですので、温泉施設も高級感を保ち、ブランドイメージを踏襲して、他の日帰り温泉とは一線を画したいということなのでしょうね。

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 休息もほどほどに、ロッカーキーを返却ボックスに返して、受付を経由することなく退館しました。

 懐も心も貧しいジジイはいろいろ文句を垂れてしましますが、眺めの良さやサウナの素晴らしさは大きな魅力であり、料金に見合った満足感は十分に得られるものと思います。また利用させていただきたいと思います。