プチリニューアルした 「西方の湯」

 胎内市の海岸部にある「西方の湯」は、泉質もさることながら、その独特の雰囲気が魅力です。
 来る人を拒むような怪しげな空気感があるため、一般人は行きにくいかもしれませんが、一度行けばもう怖くありません。その魅力を感じていただけるものと思います。
 私は、毎年新年の初湯はここと決めていて、初詣代わりに親鸞聖人にお参りし、元旦の一番湯をいただくのが常でしたが、今年は営業開始が3日でしたので、新年の初湯は他の温泉に譲ることになりました。でも、私の温泉ライフには欠かせない温泉であり、行くだけでほっとする温泉です。

 この温泉は、「塩の湯温泉」とともに、毎年6月に源泉井戸の定期点検のため休館になりますが、営業再開とともに新潟に本格的な夏がやってきます。
 今年の営業再開は「塩の湯温泉」の営業開始よりかなり遅れて7月3日になりましたが、その間に少しだけリニューアルしたとの情報をいただき、気になっていましたので、先日遅ればせながら行ってきました。

 下越の海岸部を走る国道113号線を北上し、「塩の湯温泉」を過ぎて、しばらくしますと「西方の湯」に到着です。
 日没時ということもあってか、広大な駐車場に車はなく、静かな空気が漂っていました。

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 親鸞聖人像が後方から夕日に照らされていました。

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 玄関に行きますと、人の気配が全く感じられませんでしたので、営業しているのか心配になりましたが、中の看板で安心しました。

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 中に入りますと、館内は薄暗くて、シーンと静まり返っていました。館内は以前と変わりないようでしたが、スリッパが新調されていました。

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 受付は無人で、呼び鈴を鳴らしても出てきませんでしたので、500円を料金皿の上に置いて浴室へと向かいました。
 料金は、大人500円、小人300円で、タオルは200円です。営業時間は、午前10時~午後8時までで、定休日は火曜日です。

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 骨董品類が並び、暗くて不気味なロビーを抜けて、長い廊下を進んで奥の浴室へと向かいました。

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 浴室前には、新しくスリッパ入れが設置されていて、入り口でスリッパを脱ぐようになりました。

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 スリッパ入れにスリッパが1足置いてあり、先客がいるのかなと思いましたが、脱衣場・浴室とも無人で、私が浴室から出るまでの間、完全な貸し切り状態で利用できました。

 入り口の暖簾をくぐって中に入りますと、これまであった段差がなくなっており、ゆるやかな絨毯敷きのスロープになっていました。

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 脱衣場は絨毯が張り替えられてきれいになり、ロッカーが整理されて、広々感を感じるようになっていました。

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 ロッカーの番号は、相変わらず不揃いで、「西方の湯」らしさを維持していました。

 洗面台は変わりないようですが、ドライヤーが新しくなっているようです。

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 脱衣場はエアコンが稼働していて、サーキュレーターが回っていました。楽しみにしていた名物の古いナショナルの扇風機はありませんでした。あれを見ると子供時代を思い出すのですが、さすがに使用は限界でしょうね。

 浴室に入りますと、特に変わりはないようでした。

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 壁が塗り替えられてきれいになっており、クールダウン用の椅子が置いてありました。

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 大浴槽から流れ出た源泉は、小浴槽へと流れ込み、浴槽の縁から十分量がオーバーフローされています。

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 壁際にある洗い場で洗身し、夕日に照らされながら浴槽に浸かりました。

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 湯温はぬるめで、高温の大浴槽で42~43℃程度に感じられました。

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 浴槽の底には大量の沈殿物(湯花)があり、浴槽内を移動しますと、沈殿物が湯面へと沸き上がってきました。

 注湯口前では、湯面に泡が浮かんでいました。

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 いつもなら注湯口前は高温で近付けないほどなのですが、ぬるめでしたので、近くで温まりました。

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 この浴槽に見慣れない物を発見。

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 この棒は何でしょうね。

 毎年夏に楽しみにしている露天風呂は残念ながら閉鎖されており、外に出るドアも封鎖されていました。

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 露天風呂の配管が壊れて使用できないとのことですが、今後復旧できるのかどうかが心配です。

 さて、脱衣場に掲示されている平成30年12月14付の分析表が、以前はN12-1号井だったと思いますが、今回はN12-2号井になっていました。
 源泉名は、N12-2号井。泉質は、ナトリウム-塩化物強塩泉(高張性弱アルカリ性高温泉)。源泉温度 50.8℃。湧出量は測定不能(動力揚湯)。PH 7.5(試験室では7.7)です。
 主な成分(イオン濃度:mg/kg)は、Li 1.5、Na 13210、K 153.0、NH4 199.4、Mg 85.4、Ca 640.4、Sr 6.5、Ba 1.7、Al 0.0、Mn 0.3、Fe(II) 4.2、Cu 0.0、Zn 0.0、F 0.2、Cl 20790、Br 134.5、I 88.8、NO2 0.0、NO3 0.7、HS 0.0、HSO4 0.0、S2O3 0.0、SO4 9.7、HPO4 0.2、HCO3 629、CO3 0.0、メタケイ酸 106.7、メタホウ酸 172.1、遊離CO2 21.0、遊離H2S 0.0、など、ガス性除く成分総計は36241mg/kgです。
 なお、よう素イオンが88.8mg/kgあり、よう素泉の基準(10mg/kg)をはるかに超えますので、正確な泉質名は、含よう素-ナトリウム-塩化物強塩泉となります。
 これまでのN12-1号井と比べて、ガス性除く成分総計が、28087mg/kg→36241mg/kgと高濃度となりました。
 組成的には大きな変化はありませんが、全体が高濃度になっている中で、炭酸水素イオンが、2246mg/kg→629mg/kg、メタホウ酸が430.2mg/kg→172.1mg/kgと少なくなっているのが目立ちます。これは数字上だけの問題であり、体感上の印象は変化は感じられません。
 以前より沈殿物が多かったですが、茶濁りの湯は、よう素臭・アンモニア臭が入り交じったいつもの臭気であり、舐めれば当然塩辛いです。湯温はぬるめとはいえ、強塩泉ですので、温まりには問題はありません。

 久しぶりの湯を楽しみ、浴室を出ますと、次の客が2人続けて来られ、廊下ですれ違いました。閉館まで時間が少ないですが、お楽しみいただきたいと思います。

 帰り際に受付に居た女将さんに挨拶しましたが、「久し振りですねえ・・」と言われました。正月以来ご無沙汰していて申し訳ありません。
 お湯の温度はどうだったかと聞かれましたので、ぬるめだったと返事しますと、熱いと言われれること多くて、ぬるめにしているとのことでした。
 話をしていましたら、奥から黒猫が出てきましたので、猫にも挨拶して退館しました。

 なんだかんだ言っても大好きな温泉です。泉質的には、かつてのイメージソングまで作られた伝説の黒湯のようなインパクトがなくなり、正直言って「塩の湯温泉」に負けていますが、浴室や施設全体の雰囲気を総合して「西方の湯」の魅力は失われません。
 500円の入浴料で維持経費が賄えるのか心配ですが、余計なお世話でしょうね。親鸞聖人のご加護もいただきながら、これからも楽しませていただきたいと思います。