鮮度抜群! 掛け流し! 咲花温泉「柳水園」

 心身のストレスがたまって張り裂けそうなとき、癒してくれるのは温泉です。でも、どうせなら鮮度の高い温泉を楽しみたいですね。
 仕事帰りにひと風呂と考えたときに、いろんな選択肢がありますが、今回は久しく行っていなかった五泉市の咲花温泉「柳水園」を選びました。
 柔らかな硫黄泉が魅力の咲花温泉には数軒の旅館がありますが、浴室設備や景色は別にして、鮮度の高さでいえば「柳水園」が最高でしょう。昨年11月以来の利用ですので、5か月ぶりになります。

 国道49号線から馬下橋で阿賀野川を渡って対岸へ進み、すぐに左折して阿賀野川沿いに進んだ先が咲花温泉です。
 JR咲花駅前を左に折れると温泉街なのですが、平日は道路に人の気配を感じず、静かな空気に包まれています。
 温泉街に入り、高層の望川閣を過ぎますと、右に細い坂道がありますので、ここを上って行きます。

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 「柳水園」の看板が出ていますので、これが目印です。坂の上に無舗装の広場があり、ここに車をとめます。

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 玄関の明かりが優しく迎えてくれます。

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 ガラス戸を開けて中に入り、靴を脱いでスリッパに履き替えます。

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 左手には「柳水園」の命名者である作家の尾崎士郎による「柳水園」と書かれた書が掲げられています。

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 右手の部屋に女将さんがおられ、料金を払いました。入浴料は、大人600円、子供300円で、6枚で3000円の回数券もあります。咲花温泉の各旅館で使用できる「湯めぐり手形」(3回分で1800円)の販売もしています。入浴時間は、午前9時から午後8時30分までです。

 レトロな空気が漂う狭い廊下を奥に進んだ先に浴室があります。

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 手前が男湯、奥が女湯です。観葉植物の葉に「男湯」と書かれた札が下げれれているのがいいですね。

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 幸いにして先客がおられず、脱衣場の明かりが消えていて、暗い中にスイッチを探し、照明を付けました。
 入り口から階段を3段降りたところが脱衣場で、脱衣棚に脱衣籠、洗面台がひとつあり、ドライヤーがあります。ほかに体重計と、ここには不似合いな革張りの小さなソファがあります。

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 浴室は非常に狭く、全体で四畳半くらいでしょうか。3~4人で満員ですので、先客がおられますとゆったりとはできません。
 小さな浴槽には淡緑色透明な湯が満ちており、左奥の注湯口から注がれた源泉が、右側の浴槽の縁からオーバーフローされています。

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 朽ち果てた壁際にシャワーとカランのある洗い場らしき場所が2か所あり、ボディソープとリンスインシャンプーがあります。

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 先回は終始独り占めできて、ゆったりと湯を堪能できました。今回も独り占めの入浴を楽しめるとニヤリとしたのですが、そんな思いも束の間に、次の客がすぐに入って来られました。
 残念ながら独占入浴とはならず、以後の写真もありません。お体にきれいな絵が描かれたお兄さんとご一緒して、入浴を楽しみました。

 いつもより硫化水素臭は少ししか感じられず、ほとんど無味無臭でした。湯温は43~44℃程度と私好みの温度で、小さな浴槽に十分量が掛け流されていますので鮮度は抜群で、肌にキシキシと滲みてきます。
 もちろん温まりは良く、目を閉じて湯と対話するうちに次第に頭から雑念が消え、ストレスが解消できました。注湯口から湯を手に受けて飲泉も楽しみ、湯を存分に楽しみました。
 ご一緒したお兄さんは私に気を遣っておられるようでしたので、空気を読んで、十分に温まったところで早めに浴室を出ました。

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 平成26年10月26日付けの分析表によりますと、源泉名は,咲花温泉6号。泉質は、含硫黄-ナトリウム・カルシウムー塩化物・硫酸塩温泉(弱アルカリ性低張性高温泉)。源泉温度 48.3℃、使用位置 46.3℃で、PHの記載はありませんでした。
 主な成分(イオン濃度:mg/kg)は、Li 0.2、Na 233.1、K 7.0、NH4 0.8、Mg 0.8、Ca 75.7、Sr 1.2、Ba 0.0、Al 0.0、Mn 0.0、Fe(II) 0.0、Cu 0.0、Zn 0.0、F 1.7、Cl 286.4、Br 0.9、I 0.4、NO2 0.0、NO3 0.0、HS 20.5、HSO4 0.0、S2O3 7.6、SO4 281.7、HPO4 0.2、HCO3 45.2、CO3 0.0、メタケイ酸 55.5、メタホウ酸 3.4、遊離CO2 2.5、遊離H2S 3.7 など、ガス性除く成分総計は、1022mg/kgです。
 加水なし、加温なし、循環ろ過なし、入浴剤の使用なし、温泉の入れ替えを毎日行っており消毒剤の使用なし、浴槽は毎日換水し浴室は毎日清掃、レジオネラ属菌と大腸菌群の検査を年1回以上実施とのことです。

 ガス性除く成分総計が1022mg/kgとぎりぎり塩類泉になっていますが、少し濃度が下がれば単純硫黄温泉となります。
 硫化水素イオン20.5mg/kg、チオ硫酸イオン7.6mg/kg、遊離硫化水素3.7mg/kgと硫黄分は多く、月岡温泉や多宝温泉に次ぐ県内でも屈指の硫黄泉といえます。
 この良質な源泉が、加熱も加水も消毒もなく、何も手を加えることなく、そのまま掛け流しされています。
 浴槽は大きくないため、掛け流し量も十分であり、湯が透明なのは鮮度が高い証です。咲花温泉の本来の味わいを楽しむなら、ここがベストであることには異論はないでしょう。

 昭和レトロの古い館内。小さな浴室で設備は乏しく、触れば崩れ落ちる朽ち果てた壁は、清潔感に乏しく、一般人は躊躇されるかもしれません。
 しかし、手を加えない生の源泉を、そのまま掛け流しで楽しめるというのは、何ににも勝る魅力であり、喜びです。
 この源泉を前にして、これ以上何を望むことがありましょうか。一般人に広くお勧めできるかと言えば別ですが、このブログをお読みくださるような温泉好きの皆さんには自信をもってお勧めします。
 ただし、浴室は狭いですので、先客がおられるときには、その中に入っていく勇気と、譲り合う心遣いが必要ですので、ご留意ください。

 女将さんに挨拶して退館し、噴き出る汗をタオルで拭きながら、人の気配がない真っ暗な温泉街を後にしました。
 阿賀野市を抜けるまで汗は止まらず、咲花温泉のパワーを再認識し、気分よく車を走らせました。