杉林に囲まれて 静かに佇む 今板温泉「湯本館」

 阿賀野市の五頭温泉郷の中にあって、ちょっと目立たず、杉林に囲まれて静かに佇む一軒宿が今板温泉「湯本館」です。
 村杉温泉と出湯温泉の間にあり、国道290号線からのアクセス道路が狭く、国道を通っても通過するばかりで、最近は利用することがありませんでした。
 こんな中、6月末に私が運営している掲示板に「湯本館」の情報(1888)をいただき、たまにはということで立ち寄り湯させていただきました。2018年12月に忘年会で宿泊して以来でしたので、6年7か月ぶりでした。

 国道290号線の村杉温泉と出湯温泉との間に「湯本館」の看板がありますので、そこを山側に入ります。道は非常に細く、スピードを出していますと気付かずに通り過ぎてしまいますのでご注意下さい。
 杉林の間のすれ違いも困難な細道を進みますと、急に視界が開けて広い空間となります。左に駐車場があり、その奥に「湯本館」があります。

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 狭い道路を抜けた先に広がる周囲を緑に囲まれた静寂な世界。まるで別世界に迷い込んだかのような雰囲気を感じます。

 この空間の奥には、杉の巨木の後方に、薬師如来を祀った弘法大師ゆかりの「薬師堂」が静かに佇んでいます。

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 「薬師堂」の右横には、旧来からの2体の地蔵尊とともに「救難六地蔵尊」という名の六地蔵尊があります。これは昭和42年8月28日の下越地区を襲った大水害で、この地での6人の犠牲者があったことから建立されたとのことです。

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 深い森に囲まれた空間にある8体の地蔵尊を、夕暮れ時の静寂の中で眺めていますと、神妙な気持ちになります。

 お参りをして「湯本館」に行きましょう。玄関には屋根付きの立派なスロープが付けられています。

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 玄関先に日帰り入浴の案内が出ていて、旅館の立ち寄りを利用するハードルを下げてくれてありがたいです。
 
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 玄関を入り、靴を脱いでスリッパに履き替えます。左にフロントがありますので、氏名・住所・電話番号を紙に書き、料金を払います。
 
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 日帰り入浴の営業時間は、10:30~15:00、18:00~21:00で、料金は大人700円、小人400円で、温泉旅館の立ち寄り湯としては良心的な料金と言えましょう。
 10枚で6000円の回数券(1年間有効)がありますので、これを利用すればさらに格安になります。

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 ロビーからは杉林に囲まれた庭が見えて、池には鯉が泳ぎ、落ち着いた空気を感じます。

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 左にあるエレベーターで2階に上がりますと、左奥に浴室があります。

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 浴室前には、小さいながらも休憩場所があります。

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 ここに温泉の分析書のほかに、大正13年の古い効能書きが掲げられていて、由緒あるこの温泉の歴史を感じさせてくれます。

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 脱衣場、浴室とも広くはありませんが、収容人数を鑑みますと妥当な広さといえましょう。
 宿泊客は食事の時間であり、私の他に立ち寄り客はなく、浴室を独り占めで楽しむことができました。浴室はきれいに管理されており、気持ち良く利用させていただきました。

 脱衣場には脱衣棚に脱衣籠。横には鍵付き脱衣棚があります。

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 洗面台には、ドライヤー、整髪料、綿棒などのほか、ヘアブラシが置いてあります。

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 浴室に入りますと大浴槽がひとつあるのみで、ガラス窓を通して露天風呂が見渡せて、狭い割には開放感を感じます。

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 壁際に洗い場が4か所あり、一番左は高級シャワーヘッドになっていて、ボディソープ、シャンプー、コンディショナーがあります。

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 こういう掲示はほかでは見たことがありませんが、特別なリンスなんでしょうか。

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 内湯にゆったりと浸かってリラックス。注湯口からは湯が注がれていますが、オーバーフローはなく循環されています。

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 湯は無色透明無臭でほとんど無味ですが、若干のすべすべ感を感じました。湯温は40~41℃程度でしょうか。
 源泉温度が低いので加熱・循環は避けられませんが、カルキ臭さは感じられず、気分良く湯を楽しみました。
 一見して特徴のない湯ではありますが、村杉温泉と同様の弱放射能泉(ラジウム温泉、ラドン温泉)で、湯温はぬるめですが、身体の芯からあたたまります。

 露天風呂に移動。うっそうとした杉林に囲まれて、静かな空気に満たされ、それだけで心は癒やされます。

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 浴槽は円形で、内湯と同様の湯が満ちています。ここも循環湯ではありますが、気持ち良く温泉を楽しむことができます。露天風呂の横では扇風機が回されていて、虫を追い払ってくれています。

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 杉林を眺めながら湯に浸かり、湯と対話し、そして無念無想。贅沢な時間を過ごしました。

 内湯に戻り、湯を楽しむうちに、次の客が二人続いて来られましたので、混雑を配慮して長居せず、浴室を後にしました。

 平成26年9月1日付の分析書によりますと、源泉名は今板温泉。泉質は単純弱放射能冷鉱泉(低張性弱アルカリ性冷鉱泉)。源泉温度20.6℃(気温22℃)。湧出量91L/分(動力揚湯)。PH 8.0。
 主な成分(イオン濃度:mg/lg、平成26年9月1日付)は、Li 0.2、Na 236.7、K 3.5、NH4 0.8、Mg 1.3、Ca 34.6、Sr 0.6、Ba 0.0、Al 0.0、Mn 0.0、Fe 0.0、Cu 0.0、Zn 0.0、F 1.8、Cl 173.3、Br 0.7、I 0.0、NO2 0.0、NO3 0.0、HS 0.0、HSO4 0.0、S2O3 0.0、SO4 291.8、HPO4 0.0、HCO3 77.5、CO3 0.9、メタケイ酸 32.4、メタホウ酸 2.8、遊離CO2 0.9、遊離H2S 0.0 など、ガス性除く成分総計は858.9mg/kgです。また、ラドンを31.6x10-10Ci/kg(8.53マッヘ/kg)含みます。

 源泉はポンプにて揚湯して貯湯タンクに汲み上げ、汲み上げた源泉は加圧ポンプで各浴槽に供給。加温、循環ろ過装置使用、塩素系薬剤による消毒ありと掲示されています。

 村杉温泉にはかないませんがラドンを含み、気分的な効能も含めてラドン温泉の効能を感じ取ることができます。
 効くと思って湯に浸かることが、効能を実感する秘訣です。湯の効能は別にして、落ち着いた露天風呂の空間は、泉質を論じることなど意味をなさない魅力に溢れています。

 湯上がりに汗がなかなか引かず、浴室前で給水しました。

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 退館して、玄関先にあるモニュメントを眺めて駐車場に向かいました。

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 杉林の細道を走って国道に出て、異空間の夢の世界から現実世界に立ち戻りました。

 小規模旅館の小さな浴室ですので、混雑しますとリラックスできませんが、空いているときに利用すれば至福のひとときを過ごせます。
 館内はきれいに管理され、女将さんの心遣いが感じとれます。なにより、日帰り入浴客を積極的に受け入れてくれているのが良いですね。
 出湯温泉や村杉温泉に出かける人は多いと思いますが、たまには杉木立の間に密かに佇む「今板温泉」も良いですので、皆様方もご利用下さい。